令和6年度卒業設計 松遙賞(各賞)
■企画提案賞
| 作品名 | 乾燥の森、林業の廻-新たな木材流通システムが空間を生み、林業を再興させる- |
| 受賞者 | 海江田 理純 |
| 作品講評 | 古来、我が国の建築物の材料として用いられてきた国産材は、経済発展と国際的な物流環境の発展による安価な外国産財の流入により需要が低下し林業も衰退の一途をたどっている。 一方、国の施策の後押しもあり木材を活かした秀逸な建築も数多く誕生しているが迅速な供給を求める建設現場に対し、自然乾燥木材の供給が不安定であるがゆえ本来の色味や香りを失った人工乾燥木材の利用が主流となっている。このような状況に対し本作品は、都市部の交通の要衝地において自然乾燥のための木材ストックヤードでありながら人々の交流や木材・林業の体験の場としての機能を備える拠点を提案している。建築内部では上下部のレールに固定された移動可能な桟積み木材ユニットが空間区分の構成要素として用いられ、区分された複数の迷路的な空間で、人と人、人と木材との豊かな関わりや体験を提供している。桟積み木材ユニットによる空間区分がこれまでにない空間を提供しているが、惜しむらくは、鉄骨造の大規模空間内の試行にも見え建築の新たな提案としてとらえ難いとも言える。 |
■空間造形賞
| 作品名 | 灰の行方 |
| 受賞者 | 石澤 航 |
| 作品講評 | 鹿児島において、これまでネガティブなイメージのあった桜島の火山灰。それをゴミとして捉えている現状は社会にとって大きな負荷となっているが、それをポジティブな見方に変えて資源として捉え直すことで、大きな価値が生まれるのではないかという提案。その造形的センスで、ランドアートのようにこの火山灰でできた風景を桜島の中に作り出すことで、その価値を再認識させ、つくり出された真っ黒な空間越しに現在の都市の風景を逆照射する大きなメッセージを持った作品である。その力強い造形は、ポリティカルコレクトネスに寄ることなく、建築の力を信じようとする姿勢が表れており、その空間造形センスは将来を期待できるものであった。 |
■環境デザイン賞
| 作品名 | 風とともに暮らす〜ご近所さんと一緒に風づくり〜 |
| 受賞者 | 大池 岳 |
| 作品講評 | 本作品は、京都の町屋の中に風を巧みに呼び込む集合住宅の設計である。特筆すべきは、集合住宅自体の快適な風環境を実現するだけでなく、周囲の町屋に対しても風通しを改善する効果をもたらしている点である。この相乗効果は、地域全体の環境を向上させる持続可能な建築デザインの一つのモデルケースとも言える。 卓越風の向きを考慮した袖壁の設置や、建物形状の工夫による風のコントロールは、風環境の最適化を目指した高度な設計アプローチである。そこにCFD解析を用いたシミュレーションに基づく設計を取入れ、意匠性と快適性の両立を図っている点に本作品の特徴がある。 地域文化を尊重しつつ、環境と共生する建築を目指した本作品は、今後の都市部における集合住宅の在り方に一石を投じるものとなっており、環境デザイン賞を受賞するにふさわしい優れた取り組みといえる。 |
■地域デザイン賞
| 作品名 | 陶を纏う |
| 受賞者 | 中筋 美沙 |
| 作品講評 | 讃岐平野の放置ため池の浄化という難題に対し、十瓶山周辺でかつて盛んであった須恵器生産に目をつけ、窯元の再生と陶器ガラの活用を通じて解決を図ろうとする意欲的な作品である。建物は小規模ながら、半地下式穴窯から伸びる煙突を中心に、軽やかに波打つ屋根に覆われ、存在感を放っている。建物の足元からため池まわりは、水質浄化と親水性回復の役割をもつ陶器ガラを積んだ護岸で囲まれる。護岸のデザインや住民のアクティビティの表現が素っ気ないのが惜しまれるが、讃岐平野にこんなコンセプトの建築が広がるといいなと素直に思う。丁寧なリサーチにもとづき環境・産業・交流をつなげた構想力は豊かで、プレゼンテーションも冴えた、地域デザイン賞に相応しい作品である。 |
■佳作
| 作品名 | एकता घर (Ekata Ghar) -ひとつの住処- ネパールの密集市街地におけるRC賃貸住宅の再生計画 |
| 受賞者 | シュレスターアカシ |
■佳作
| 作品名 | 違和感の街角 |
| 受賞者 | 一ノ瀬 珠里 |







