令和6年度卒業設計 松遙賞(最優秀賞)
令和6年度卒業設計 松遙賞(最優秀賞) 2作品
■最優秀賞
| 作品名 | 微分都市 -柔らかい土木による都市縮退の実験的手法- |
| 受賞者 | 佐々木 道啓 |
| 作品講評 | 人口減少が進む日本において、求められる都市像はどのようなものか?「効率的なコンパクトシティを目指して駅周辺の平地に市街地を集約し、クルマが入れない斜面市街地は緑に戻せばよい」という意見も耳にしたことがある。遠い将来、そうなるのかもしれない。一方で、人口減少地区を「置き去り」にする都市計画は、世界の縮小都市を見回しても上手く機能していない。そもそも、徒歩で中心部にたどり着けるような長崎の斜面市街地は、本当に住み続けられないのか?人口減少は、市街地周縁部の人口密度の低下をもたらすが、それを「個人が豊かに土地を使う機会」と捉えられないのか。人口減少地区にこそ、新たなデザインが必要なのではないか。 佐々木君は、段々畑から始まった斜面市街地の発展経緯をたどり、斜面市街地の町内会に調査票を配り、自家用車や現代の道路のスケールに囚われない、住み続ける仕組みを考え抜いた。その結論が、軽トラックよりもさらに小さな「ハチロク」だ。同システムは、ゴミの搬出・介護といった日常の課題から、建築の解体と新築まで、手作業と階段しか選択肢がなかった斜面市街地に新たな可能性を生み出す。ちなみに、ハチロクについて、自動運転の超小型車両じゃだめなのかと議論したことがある。佐々木君は、建築物と移動物が確実に接着する軌道にこだわった。結果として、微分都市の地表はアスファルトから解放され、段々畑のなかに多様な住み方が混在する、どこか懐かしい新たな風景が生まれた。 |
■最優秀賞
| 作品名 | 菌築のすゝめ〜木造密集地域の菌築的再生手法〜 |
| 受賞者 | 齋藤 巧 |
| 作品講評 | 世では発酵食品や菌活がブームだと聞きます。人類は、これまで生き延びてきた中で、地球上に遍く生存する多様な菌類と共存し、利用してきました。この作品は、それを建築の生産や維持管理にも広げようという、意欲的かつ実践的な提案です。個人的に開発してきた「菌糸ブロック」という一般には全くなじみのない素材を、老朽化が進む木造住宅地の再生に活用しようというストーリーですが、朽ちつつある木造住宅を、朽ちさせる原因でもある菌を逆に使って再構築しようというのだから、なかなかのチャレンジャー。結果として、極端に作品の評価が分かれます。一方に近代社会において悪玉と相場が決まっていた菌のイメージから「気持ち悪い」と生理的な拒否感を持つ人がいて、他方にはそれを乗り越えようと様々な実験や実践を繰り返してきた実績と熱量に大きな可能性を感じる人がいました。それでも、一般の方でもセルフビルドで施工やメンテナンスができ、一定の防火性能を持つ端境壁を維持するために、まちのコミュニティも維持され、徐々に街のイメージを変えつつ居住環境も改善してゆく、という話の建て付けは、持続可能なまちと建築という現代的なテーマに対して、一定のリアリティも持ち合わせています。まだまだ技術的、実務的な課題は山積みですが、形のデザインだけではなく、素材、技術、そして社会の仕組みも含めた総合的なデザインだと言えます。将来、世界初の「菌築家」として活躍してくれることを期待しています。 |



