令和2年度卒業設計 松遙賞(企画提案賞)

作品名:「CITY SLOW LIVING ー気ままに過ごす都市風景ー」
受賞者:遠藤瑞帆
作品講評:
ストレスフルな現代社会、広島市都心部の街路空間をターゲットに、移動・生活のスピードダウンと路上での豊かな体験や交流の空間・風景を提案する作品である。沿道のビルから飛び出すヒキダシ(エリマネ団体が管理)と道路と付帯施設を再編したヨリミチ(行政が管理)が連携し、ヒト・モノの多彩な巡り合いを促すという。構想力が豊かで、プレゼンテーションも冴えた、企画提案賞に相応しい作品である。一方、ヒキダシの伸び縮みを支える建築の仕組みが見えない点が残念である。にぎやかな表紙の風景を築くプロセスまで検討できたなら、提案の説得力が増したと思われる。

作品名:「ゆとり荘」
受賞者:井本圭亮
作品講評:
公営住宅を計画するときに、最初から被災時にも使える余剰の基礎を作っておくという斬新なアイデア。予想不能な災害に対して余剰投資をしておくことが社会的に可能かどうかという根本的な議論はあるにせよ、レジリエントな社会を構築するために、災害への先手を打つ可能性について思考実験を行ったことは評価できます。もちろん、基礎形状、排水、レベル設定、公営住宅の構造といった建築上の問題は突っ込みどころ満載ですし、スケッチ同様に計画も相当緩いのですが、実は視点をずらせばスケルトン・インフィルの持続可能な計画とも深読み可能です。公営住宅の外皮が耐久性が高く堅固なRCで、内部の間仕切りや屋根のない基礎の上の建築が木造で常に更新されるとすれば、余剰を持ちながらも必要に応じて更新し続けられ、屋内外が有機的につながる住宅地にもなり得ます。