令和7年度卒業設計 松遙賞(各賞)

令和7年度卒業設計 松遙賞(各賞) 

■空間造形賞

作品名 蕾光庵
受賞者 山之口 涼霞
作品講評 和紙のみを使って建築を作るという挑戦的なプロジェクトです。最初はよくある照明器具のように、骨組みに紙を貼る形を検討していたようですが、3Dプリンターのサポートなどにも使われている「ジャイロイド」という幾何学形態が使えるのではと思い至り、そのジオメトリーを変形して和紙のみで構造を成立させた魅力的な茶室ができあがりました。さて、紙という材料は局面にも柔軟に適応し、水に溶かしたり澱粉糊などで比較的簡単に接着してゆくことができます。また、ジャイロイドという形状は極小曲面の繰り返しなので、紙のような薄い材料を無駄なく用いて、最も軽量で合理的な構造体を作ることができます。つまりこの手法を使えば、理論上かなり大きな建築の構造にも対応できます。そしてもし部分的に不具合が出たとしても、その部分を切り取って新しいものに貼り替えることも容易です。ジャイロイドは3次元直交グリッドの繰り返しなので、もっと複雑な形状の空間にも容易に変換できますし、面材を貼って空間を仕切ることも容易です。そんないろんな可能性が見えることが、このプロジェクトの価値を高めています。


 

■地域デザイン賞

作品名 「風の環」という希望 集まって暮らす、消滅しゆく農村集落が生き続けるための代替案
受賞者 喜多川 寛汰
作品講評 都市部への人口流出と人口減少社会の到来は、特に1次産業を生業とする農村集落等における生産性やコミュニティの維持に課題を与え、また、永年受け継がれ地域の景観を形成した棚田等の地域資源維持をも困難にしている。他方、我々を取り巻く社会や経済が大きく発展し変動するなかで、特にコロナ禍は、我々の価値観や生活様式を再考させ、さらにITの発達は空間を共有しない就業形態を可能とし、居住地選択の自由度を広げたと言える。
このような状況を受けて本作品は、全ての農村集落の維持は困難であることを踏まえたうえで、今なお森林、水、日照、風等の資源やポテンシャルを残す集落を選定し新たな集落のあり方とそのj持続的維持の姿を提示している。個別の要素や提案技術にはやや既視感を覚えるものの、複数の集落住民が培ってきた技術や知恵を活かすとともに、新たな装置や仕組みを持ち込み編集された提案は、資源の生産と消費地を一致させた大きな循環系を基盤とする新たな集落と生活の姿、そして集落維持のモデルとしての可能性が感じられる。

 

■企画提案賞

作品名 2026:大きな家
受賞者 石田 泰都
作品講評

この作品は、北陸の家の大きさに着目したものである。元々北陸の土地柄、立派な家が多かったのだと想像に難くないが、そのため部屋数が多かったり、気積の大きい家屋が多いエリアだったことに対して、人口が減っている現在、その余白(無駄)となってしまっている空き部屋などの部分に着目している点が興味深い。その大きな気積を残した空間に風や光を通し、外部と内部の中間的な場所として環境的調整機能を合わせ持たせており、室的な機能を選択しながらその中間領域に引き出すことによって、多目的で魅力的なスペースになっている。地元愛もあったのだとは思うが、彼独自の地域に密着した視点と現代的な環境配慮への視点を重ね、地域の将来のビジョンにもつながる提案をしている点が秀逸な作品であった。

 

 

■環境デザイン賞

作品名 間垣集落の実践誌
受賞者 菊池 慎太郎
作品講評 石川県輪島市大沢町の間垣集落を舞台にした本提案は、「半農半漁+半電」という自律型集落の新たな可能性を提示しています。
特筆すべきは、森林資源を活用した木質バイオマス発電と風力発電を組み合わせ、得られた電力を電気自動車(EV)や電動船のバッテリーに蓄電・移動させることで、集落内のエネルギーを自立的に賄うシステムを構築している点です。縮退社会において、従来のインフラ維持が困難となる農村部をいかに存続させるかという課題に対し、エネルギーの観点から再編を図るアプローチは極めて合理的であり、必要不可欠な解法といえます。
電力、水道、道路、情報のインフラの中でも、生命線となる電力を都市ネットワークから独立させ自立させる仕組みは、農村集落の将来像を示しており、その意義は非常に深いといえます。環境と調和しながら自立して生き抜く集落の姿を具体的に描き切った秀逸な提案として、環境デザイン賞にふさわしいものと評価しました。

■佳作 2作品

作品名 わたしだけの不確かな世界
受賞者 岩切 麻衣

 

作品名 気配(きくばり)路地の住人たち                          
受賞者 吉矢 悠栞